レフレックスレンズの特徴といえばリングボケ。特徴的なドーナツ状のボケですが、使い方によっては幻想的な表情で他にはない絵作りが期待できます。
レンズ、被写体、背景のそれぞれの距離や光の状態、形状によって変化するリングボケ。場合によっては嫌味な表現になってしまいますが、それでも癖のあるボケ味は使いこなしたいものです。
そこで今回は、コントロールして使いこなすというにはまだまだですが、レフレックスレンズのリングボケとして、特徴のある写真を作例として載せてみることにしました。
<目次>
- リングボケは玉ボケのセンターが抜けた感じ。
- 野鳥の背景にあるリング模様をどう感じるか。
- ちょっと不思議な、カワセミとレフレックスレンズのリングボケ。
- 油絵?アクリル画?濃密な背景の陸の上のオオバン。
- リングボケの少ないレフレックスレンズで撮った野鳥。
- レフレックスレンズとカメラボディ。
- 現在販売中(発売予定)のレフレックスレンズ。
- 過去のレフレックスレンズの記事はこちらです。
リングボケは玉ボケのセンターが抜けた感じ。
葦の中を飛び交うメジロを撮影しました。葦の向こうには水面が光に反射していました。
反射した光がリング状にいくつも重なり合ってボケを作っています。
個人的には綺麗だなと思います。
同じくメジロを撮影。こちらは、東京港野鳥公園で野鳥がよく集まっている木です。この木はたぶん「マユミ」だと思うのですが、実がかなり枯れています。それでもメジロやコゲラなどがやってきては啄んでいました。
メジロの頭の後ろあたりに、実があるのですがリング状にボケてしまっています。輪っかのような実に見えていて不自然ですね。
アオジが木の枝の中を移動しています。
枝のような棒状のものがリングボケすると、リングが連なったような二線ボケに似た太めのボケを作ります。これはちょっと見苦しいともいます。
こうなると鳥よりも背景に目線を引っ張られてしまうため写真が成立していないように感じます。
レフレックスレンズでの撮影では、通常のレンズで撮ると玉ぼけになる部分がリング状になります。これはレンズの中心に鏡が付いているために、中心部分を通る光が遮られることによって起こるもの。自然なボケとは言いづらく、ボケる対象によっては違和感があると思います。
ニコンにもレフレックスレンズがあり、こちらで詳しく書かれています。
野鳥の背景にあるリング模様をどう感じるか。
遠くの芝生に野鳥を見つけました。
引きの写真では、なだらかにボケるというよりは、ピント面とボケている範囲がはっきりと分かれているように思えます。
リング状にボケてはいますが、それほど不自然さは感じないと思います。
トリミングして寄ってみます。タヒバリでした。
背景ではリングが重なってボケているのがわかると思います。穴のあいたビーズでも撒いたように見えました。
これはこれでいいかもしれない、というのは人それぞれですね。
TAMRON SP 500mm F/8(55B)での撮影ではSONY α7RⅢを使っています。
α7R3はフルサイズで7952×5304の 約4,240万画素。
APS-C/Super 35mmを選んで「APS-Cクロップ」の5168×3448約1,800万画素では750mm相当になります。
撮影では、はじめから750mmになるAPS-Cサイズに設定することもありますが、後のトリミングの自由度を考えてフルサイズの500mmで撮影していることもあります。
海外では珍しい鳥、ヒヨドリ。
ヒヨドリと、ヒヨドリの留まったトキワサンザシ(たぶん)の木。そして、イラストのような背景の緑と白のリングボケが、合成写真のようにも見えます。
「なんだ、ヒヨかぁ」と思わずにアートを感じてください。
あらためてヒヨドリについても図鑑で調べてみるのもいいですよ。僕はこの本を使っています。
気軽な散歩に持っていくこともできるTAMRON SP 500mm F/8(55B)。575gと軽量で、最大径84mm×全長91.5mm。フードを外せば、小ぶりなカメラバックにも収まります。多摩川の土手を歩いていてモズを見つけたので、撮影しました。
この背景はもう、写真というよりも「絵」。
個人的にはモズが綺麗に撮れているのに、ちょっと気持ち悪い背景だなと思いました。
ということで、モズの飛び出しの瞬間写真。
これなら、ちょっとしたアート写真に見えると思います。
真横から捉えたモズも象徴的でカッコよく見えます。
ちょっとピンあま、ブレ多めなのはご勘弁を。
リングボケの出たこの写真では、リアリティはそれほど重要ではないと思います。多少、画像が荒れても気にせずトリミングしても問題ないでしょう。
むしろ自由に写真を「いじる」ほうが楽しいと思います。
ちょっと不思議な、カワセミとレフレックスレンズのリングボケ。
洗足池のカワセミです。
冬になって定番位置の葦などの草が刈られてしまったので、登場時間が短く、会えるかは運次第のカワセミ。(葦が刈られる前は、木々の葉っぱもあって隠れられるため、長い時間いてくれました。)
逆光気味のカワセミと散らしたようなリングボケが不思議な世界観をつくっています。
ダイブの瞬間は撮れませんでした。
魚を咥えて戻ったところ。
あとから描き足したようなリングボケ。
ぱっと見で「自然にみられるかも」と思いましたが、十分不自然ですね。
レフレックスレンズやそのリングボケを知らない人がみると、フォトショで加工したの?と言われそうです。
逆にこのリングボケを画像修正で消すのは難しいと思います。
油絵?アクリル画?濃密な背景の陸の上のオオバン。
陸に上がったオオバンが何か啄んでいました。
背景の重なりあうリングボケが、(良く言えば)油絵の特殊な技法のように見えます。
もう少しカラフルな背景ならよかったかもしれません。春になって花が咲くようになったら、また違う印象になったでしょう。
オオバンの足は弁足といって、水かきが広がったヒレのようなものが足指に付いています。陸に上がっていたので、写真に撮りたかったのですが、近づいたり、立ち上がると逃げてしまいます。
あまり怖がらせたくないので、深追いはできませんでした。
オオバンを観察して楽しんだあとで、川の方に伸びていた木の枝を見るとモズがいました。
夕日に照らされています。
こういう背景なら、普通のレンズと大差はないですね。
リングボケの少ないレフレックスレンズで撮った野鳥。
ジョウビタキのメスをかなり近くから撮影できました。
拡大するとそれなりに解像しています。
基本的にレフレックスレンズは絞りが固定なので、被写界深度を変化させボケをコントロールするようなことができません。
とくに野鳥撮影の場合は、被写体である野鳥の気分次第で背景が変わるため、ほぼ成り行きで撮影することが多いでしょう。
不快な表現になるリングボケを回避するのは、運次第と言ってもよく、発生の傾向がわかったとしても、それは骨の折れる作業になります。
レフレックスレンズを使うのであれば、リングボケがでてもそれを個性と思って作画に活かすつもりで撮影する方が良いと思います。
先ほどの洗足池のカワセミです。
探していると、定位置以外にも現れます。距離も近く、正面から撮影できました。
背景のボケも独特な感じはするものの、嫌味のない深い色合いのボケで気に入っています。
この背景は光の当たっていない水面です。
レフレックスレンズとカメラボディ。
レンズはTAMRON SP 500mm F/8(55B)。タムロンが1979年頃に発売したレフレックスレンズです。軽量コンパクトを重視した散歩に携帯することができる望遠レンズとして中古で購入しました。ニコンFマウント。
カメラはSONY α7RⅢ。手ぶれ補正のないレフレックスレンズを使う場合、ボディ内手ブレ補正は必須だと思います。また、拡大してピント位置を確認できるのもマニュアルフォーカスのレフレックスレンズとしてあると便利な機能。軽くてコンパクトな機材構成になるのでミラーレスカメラとレフレックスレンズの相性はとてもいいですね。
ソニーEマウントに装着するためのマウントアダプターは宮本製作所のRAYQUAL 「NFG-SαE」を使っています。
現在販売中(発売予定)のレフレックスレンズ。
レフレックスレンズの描写は個性的です。人間の目で見ている自然な描写を期待して使うにはおすすめできません。ピント合わせもマニュアルフォーカスで難しいですし。
とくにリングボケは、はじめのうちはファインダーで見ていても楽しいものですが、慣れてくると飽きてきます。何度か撮影しているうちに満足してしまう人も多いのではないでしょうか。
しかし、必ずしも、「自然な描写」だけを求めて写真を撮っているわけではありませんよね。
強引な展開ではありますが、自分のイマジネーションにリンクする唯一の描写なのかもしれません。もしくは単なる気分転換でもいいと思います。
…と、いろいろと考えてみましたが、僕はレフレックスレンズで撮影するのが楽しいです。そして撮影した写真を見るのも楽しいです。単純に「楽しい」が使う理由かもしれませんね。
現在では、ケンコーから新品で購入できるレフレックスレンズ(ミラーレンズ)もあります。
(ニコンFマウント仕様を載せてありますが、マウントはTマウントで各社のマウントに対応しています。必ず対応のマウントをご確認ください。)
トキナーからも「SZ 500mm F8 Reflex MF」というレフレックスレンズ(トキナーではミラーレンズとの表記)の新製品の発表がありました。
(ニコンFマウント仕様を載せてありますが、各社のマウントに対応しています。必ず対応のマウントをご確認ください。)
もしかすると、密かにレフレックスレンズブームが来ているのかもしれませんね。
ケンコー・トキナーではKenkoとTokinaでそれぞれを取り扱いブランドとして区別しているようです。
過去のレフレックスレンズの記事はこちらです。