ニコンのテレコンバーターTC-14EⅢの使用感を書いてみました。
レンズはAF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR。カメラボディはD500を使っています。このカメラボディとレンズはコスパの良い野鳥撮影セットとして使われている方も多いと思いますが、正直な感想として、あと少しでいいから焦点距離を伸ばしたいと思うのではないでしょうか。
タムロンやシグマのレンズがテレ側600mmなので、F値が少し暗くなるというデメリットを承知でこうしたサードパーティのレンズを使っている人も多くいると思います。
そこで今回は換算700mmになるテレコンTC-14EⅢを実際に使っての率直な感想を書いてみようと思います。
<目次>
テレコンTC-14EⅢについて。
テレコンバーターについての説明になりますが、TC-14EⅢは装着するレンズの焦点距離を1.4倍にすることができます。200-500mmf5.6の場合では、280-700mmのレンズとなります。F値が1段暗くなるので、開放のF5.6がF8となります。あわせてExifの情報も同様に変更されます。
デメリットはF値が暗くなるというほかに、画質の劣化が挙げられます。これは取り付けたレンズの性能にもよるところが大きく、一概にどうの程度画質が悪化するとははっきりと言えません。200-500mmf5.6は野鳥撮影におけるニコン純正の定番のレンズ、また僕が持っている最長の望遠レンズということで、そのあたりのことも書いてみたいと思います。
通常使用での感想。
ちょっと離れたところにいるダイサギを撮影しました。
マスターレンズになるAF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRは開放でも十分使えるレンズではありますが、1段絞って使うと画質が向上、安定します。これはTC-14EⅢをつけても同じで、よりその傾向が強いように思いました。
テレコン使用では、開放での撮影と、1段絞って撮影した時の差が、よりはっきりと感じられるということになります。
換算700mmのズームレンズ、APS-Cサイズ2088万画素からのトリミング画像としては、なかなかの画質かと思います。
条件としては、低ISO、手ぶれ補正ありでも早いシャッタースピード、なるべく1段絞ってf/11で撮影ということになります。
ただ、ボケがあまり綺麗だとはいえません。これはテレコンというよりはマスターレンズである200-500mmf5.6の描写の問題だと思います。
このイソシギの写真で見てもらいたいのは背景の波部分にある玉ボケ。
玉ボケの中が網目のようになっていて、ちょっと汚く感じます。200-500mmf5.6の唯一気になるところです。値段的に望むべきものではないのかもしれませんが、ちょっと残念に思えます。でもこのことはあまり指摘されていないようで、僕だけが気にしているのか、個体差の問題なのかは分かりません。
テレコン使用ではこの描写がより目立つように感じます。
ヒガンバナが咲いていたので近接撮影を試してみます。
やはりf/11(開放から1段絞り)まで絞れば十分な描写だと思えます。カリカリシャープな描写ではありませんが、テレコン使用でそれを望むのはちょっと贅沢かと思いますし、もしろ個人的には少し緩いくらいの方が花の撮影ではいいのではないかと考えます。
ISO1800では拡大してノイズがあるかなと思える程度。シャッタースピードをもう少し落としてISO感度を下げてもよかったと思います。
カワセミの撮影で試してみる。
D500と200-500mmf5.6の間にTC-14EⅢを挟んだときの剛性は弱くなるようですが、それでもガタツキなどはなく、使用中に不安になるようなことはありません。このあたりは質実剛健なニコンのモノづくりを感じますね。
とはいえ、ボディ側だけを持って持ち上げるような、マウント部に過度な力がかかるようなことは避けた方がいいと思います。
とういうことで、3号観察小屋にやってきました。カワセミもよくみられるポイントです。ここでは野鳥の出てくるポイントまでは、距離があるのでD500に200-500mmf5.6だけでは野鳥を大きく写せません。
カワセミの若鳥がやってきました。胸の部分がまだ燻んだ色ですね。観察窓からの撮影でトリミングなしで、このくらいの大きさに写すことができました。
枝にとまっているところだったので、シャッタースピードを1/500sに下げてf/11に絞るべきでした。
飛び出すのかと思っていたところ、向きを変えただけでした。
シャッタースピードは1/2000sですが、飛び出しを鮮明に撮るにはこれでも遅いでしょう。しかしISOは4500。やっぱり開放F値が暗すぎか・・・。
少しでも光量を稼ぎたいので、暗めに撮影してRAWデータから明るくする作戦です。
しかし、RAWデータからの調整でも限界があるので、やれてせいぜい-1段くらい。露出補正は-1/3くらいで撮影していることが多いです。
RAWデータで調整する場合、僕はキャプチャーワンで作業しますが、Lightroomでもいいと思います。
拡大して検証してみる。
やはりトリミングなしでは、テレコンを使っても小さいですね。
周囲の環境をわかるように引きの写真でもいいのですが、アップのカワセミの写真も見てみたいところです。
ということで拡大、トリミングした写真も確認してみます。
さすがに、ノイズというか、ピクセルが見えるというか、カワセミのディテールまでは再現できていませんね。
ISO1400とはいえ2088万画素からここまで拡大してしまうと、テレコンによる画質劣化なのかどうかわかりづらいところです。
D500のAFは全てではないもののf/8対応。AFも遅くなるので歩留まりは悪いですが、何とか追いかけているようです。カワセミの動きも画面に対して左右方向なのも有利になっているよう。前後方向への移動ではAFの追従は厳しいと思います。
この場所は日が当たるところでしたが、天気はやや曇りがち。やっぱりISOを下げるか絞りをちょっとでいいから絞りたいと思いました。
枝に戻ってきたところ。若いカワセミだったのでなかなか魚を捕まえてきません。練習しているだけだったのかな? どうなんでしょう。
カメラの設定は、シャッタースピードと絞りはマニュアル。ISO感度をオートにしています。
しばらくすると場所を変え、さらに奥の方で飛び込みをはじめました。
この写真では日が差していますが、くもっている時の方が多く、ほとんどの写真がとても見せられない状態。
AFは迷って追従しない状態の明るさになってしまったので、カワセミが飛び込む位置を予想して置きピンしています。
動きの早い野鳥の飛びものを撮影するときは、光量を稼ぎたいところです。無理にテレコンを使って撮影するよりは、なしで撮影した方が良いと思ます。
ですが、動きがほとんどない場合で、明るい場所なら開放から1段絞り、なるべく低速のシャッターを使ってISOを下げ、解像をよくするように撮影すればいいでしょう。
撮影する対象や条件などによってテレコンTC-14EⅢのありなしを判断したいところです。
実践テストでのまとめ。
今回はちょっと無理やりな感じでの実践テストでしたが、D500の性能を使って撮影するならテレコンはなしの方がいいかもしれません。せっかくのAF、連写性能を無駄にするような使い方になってしまいます。
もう少し被写体までの距離が近い場所でチャンスを狙う方がいいと思いました。テレコンは、どうしてもという時のために持っておくのがいいのではないでしょうか。
テレコンは Z6IIのときに使うことが多いです。
こちらの記事ではZ6IIにテレコンTC-14EⅢ、200-500mmf5.6で撮影しています。Z6Ⅱは高感度に強く、画素数も2450万画素。フルサイズのカメラなので焦点距離を伸ばしたい時に使います。
D500とどちらがいいのかと言われるとケースバイケースですが、フルサイズではそもそも焦点距離が短く、200-500mmf5.6ではテレコンの使用が前提になっています(個人的に)。