DAレンズ(APS-C用)のsmc PENTAX-DA 40mmF2.8 Limitedをフルサイズ画角で撮影、レビューします。
PENTAXの公式ではAPS-C用(DA)としながら、フルサイズでも使えると言われるレンズが多くあります。このsmc PENTAX-DA 40mmF2.8 Limitedもその1本。パンケーキと言われる薄くコンパクトなレンズで、フルサイズで使えるなら焦点距離40mmと使いやすい画角のレンズとなります。

今回はsmc PENTAX-DA 40mmF2.8 LimitedをPENTAX K-1 MarkⅡのフルサイズで撮影してきました。
<目次>
PENTAX K-1 MarkⅡに装着
PENTAX K-1 Mark IIにsmc DA40mmF2.8 Limitedを付けてみると、レンズの小ささがよく分かります。グリップとペンタ部分の張り出しと同じようなサイズ感で、普通に使うバックにラフに入れてしまえます。
*厳密にはグリップ幅よりも長くなりますが、収納する場合にはほとんど気になりません。
またドーム型フードはその形状から、レンズを十分に保護。個人的には保護フィルターを常時付けて使用するのが定番ですが、このレンズではそのまま付けずに撮影しています。また、フルサイズで使用する場合にもフードは取り外す必要はありません。
フィルターを使う場合はレンズ側に49mm、フードには30.5mmのフィルターが装着可能です。
四隅、周辺の画質について
クロップせずにフルサイズのまま使ってみます。フルサイズでの使用は公式ではサポートされていません。ネット等の情報では普通に使えるとか、周辺画質が悪いので使えないとか、どうも使う人によって意見が違うようです。

ISO200 , 1/350s , f/2.8 , DNG ,C1
ということで実際に撮影、商店街の様子をスナップしてみました。画像はDNG(RAW)で撮影、キャプチャーワンで調整・書き出しするのがいつものスタイル。このような場合、特に問題なく普通に使えるというのが個人的な感想になります。
開放f/2.8での撮影では、周辺と四隅の画質があまり良くないようですがそれほど気になることはありません。周辺減光は強いと思いますが、もともと減光がある方が好みで、調整時にはさらに画像周辺を暗くすることも多いのでむしろ好都合。逆に気になる場合は現像ソフトで明るくすることもできるので、特に問題はありません。
次は絞り値の変化で周辺画質がどうなるのかテストしてみました。手持ちの撮影ですので、微妙な構図違いはお許しください。

ISO100 , 1/1000s , f/2.8 , DNG , C1
DNG(RAW)で撮影して、現像ソフトのキャプチャーワンでストレート現像したものです。絞り開放では、特に四隅が乱れているように見えます。ケラレのようにあきらかに黒くなるものではありませんが、フルサイズのイメージサークルには足りてないように感じます。
フィルム時代に自家現像とプリントをしていた自分からすると、「ネガキャリアやイーゼルのブレードで切れちゃうし、このくらいなら気にしなくてもいいかも」と思えるのですが、デジタルの撮影では四隅もきっちり見えてしまうので、気になるといえば気になるところ。

ISO100 , 1/60s , f/11 , DNG , C1
f/11まで絞って撮影すれば、四隅の乱れはほとんど気になりません。とはいえ、よく見ると角は怪しいですね。
周辺画質をみると、これは微妙なところ。最新のレンズのように一枚一枚の葉を克明にシャープに描き切るようなものではありません。SNSやブログなどではそれほど気になりませんが、大きくプリントするときや、作品として鑑賞するような写真では、不満が出てしまうかもしれません。

ISO100 , 1/250s , f/2.8 , DNG , C1
開放f/2.8の四隅の状態を拡大してみます。まずは全体の写真です。スマホの画面で見ればたぶん気にならないと思います。大きなモニターなら「あれ?」ってなりますかね。

元の画像の左下部分を拡大した画像です。拡大画像の右上あたりはピント位置も近く、草の様子がよくわかります。左下は円周状というか、扇状というか、流れるように乱れて見えます。
そもそも、このような被写体を写すのに絞りを開放で使うようなことはあまりなく、ある程度は絞り込むと思うので、たいした問題ではないでしょう。ただ、知ってしまうと気になる、といった類のものでしょうか。

ISO100 , 1/30s, f/2.8 , DNG , C1
狛犬を撮影してみました。これも開放f/2.8。バストアップのポートレートで使うような距離感でしょうか。背景がボケているので、四隅の乱れや周辺画質などはほとんど気になりません。
画像周辺の玉ボケはレモン型になってしまいますね。
最短撮影距離・最大撮影倍率のこと

ISO100 , 1/1500s , f/2.8 , DNG , C1
寄りで撮影することの多い花の場合、四隅を含めた周辺はほとんどボケてしまうので、気になるようなことはないでしょう。

ISO100 , 1/350s , f/4 , DNG , C1
smc PENTAX-DA 40mmF2.8 Limitedをフルサイズで使うにあたり、気になったことといえば最短撮影距離です。DA40mmF2.8Ltdは最短撮影距離が40cm。本来のAPS-Cのカメラで使う場合は気になりませんでしたが(本当は少しだけ気になりました)、フルサイズで使うとあまり寄れません。正確にいえば最大撮影倍率が0.13倍で、小さな花などを撮影すると大きく写せないということになります。APS-Cでの使用感に慣れていたからか、フルサイズで使うとなると、「え、こんなもん? もう少し寄れるイメージだったのに。」となりました。
似たような焦点距離のFA43mmF1.9Ltdも最大撮影倍率は0.12倍なので、DA40mmF2.8Ltdが特に寄れないというわけではないのですけどね。

ISO100 , 1/1500s , f/2.8 , DNG , C1
画面いっぱいに写せないなら、引きでいいやと開き直ってみたり。
「このレンズで撮れるもの、そういう被写体だけを撮ればいい」と思えば快適です。
Jpeg撮って出し

ISO200 , 1/2000s , f/2.8 , jpeg(モノトーン)
モノトーンで撮影すると、ちょっと古いレンズで撮影したような雰囲気があります。smcDA40mmF2.8Ltdは2005年の発売のようですから、実際古いレンズではあるのですが……。

ISO200 , 1/350s , f/22 , jpeg(モノトーン)
最小絞りf/22まで絞ったモノトーン。回析の影響が出ているのか、周辺の画質の乱れなのかは分かりませんが、ちょっと精細さが失われているようにも感じます。実際には、「拡大してみるとレンガの質感がはっきりしないかな。」という程度なのですが、粒子感などを加えてしまえばわからないのではないかと思います。
中央付近の画質はかなりいいと思うので、個人的には問題なし。もともとカリッとシャープな画質を求めて使うようなレンズではないと思うので、これで十分かと思います。

ISO100 , 1/1500s , f/2.8 , jpeg(Gold)
ちょっと癖のあるレンズかも(フルサイズで使う場合)、ということでカスタムイメージを「Gold」にして撮影してみました。なんだか相性がいいようです。モノクロで撮るのも良いのですが、個性の強いカスタムイメージで撮るのもいいですね。銀残しも試したいところです。

ISO200 , 1/30s , f/11 , jpeg(ナチュラル)
f/11まで絞って、カスタムイメージはナチュラル。四隅、周辺画質とも気になりません。それぞれのディテールがしっかりと描写されています。
こういう写真が撮れると、「DAレンズだけど普通に使える」と思います。
フルサイズで使ってみて

ISO200 , 1/500s , f/2.8 , DNG , C1
DA40mmF2.8Ltdをフルサイズで使うと、気になってくるのがFA43mmF1.9Ltdとの違い。
所有しているFA43mmF1.9LtdはHD版の現行レンズなので、比較するのはちょっと難しいかもですが、DA40mmF2.8Ltdの方が使いやすい部分もあります。
あまりスナップで厳密にピントを追い込むような場面は少ないのですが、やっぱりあると便利なのが、クイックシフト・フォーカスA。ボディ内モーターを使うAFなのに、AF後に設定の切り替え無しでマニュアル操作でピント位置を調整できます。
FA43mmF1.9Ltdではこれが無いので、クイックフォーカスシステムがあるレンズを使った後だと、ちょっと不便だなと思うこともあります。

ISO200 , 1/500s, f/2.8 , DNG , C1
ただ、FA43mmF1.9Ltdはハッとするような印象的・情緒的な写真が撮れることがあります。
あえて言うならDA40mmLtdは端正な写り。淡々と風景を切り取ってくれるように感じます。黙々と仕事をする職人的なイメージでしょうか。
また、FA43mmF1.9Ltdのボケには惹きつけられるものがあります。それに対して、smcのDA40mmF2.8Ltdはボケに難しさを感じることも。これはHD版の円形絞り採用で改善されている可能性もあるので、どうしても気になる場合はHD版の現行レンズを検討することになるかもしれません。
*smcのDA40mmF2.8Ltdでも、開放絞りで撮影する分にはボケは円形です。

ISO200 , 1/500s , f/2.8 , DNG , C1
smc PENTAX-DA 40mmF2.8 Limitedをフルサイズで使うことについて、個人的なテストで判断する限り以下のような結果となりました。
- K-1につけると、グリップの幅とほぼ同等なので持ち運びに便利。気を使わないレンズなので、どこへでも持っていける。
- 撮影する被写体との距離によって、四隅の乱れが気になることがある。
- 開放f/2.8での撮影では四隅、周辺画質が目立つこともある。
- 四隅・周辺画質は、絞りを深くする(大きい数値にする)と改善される。気になるか気にならないかは人による。
- 周辺減光は良い雰囲気で特に気になることはない。
- 最大撮影倍率が0.13倍、最短撮影距離が0.4mはフルサイズだと使いづらいこともある(花とか小さいものを撮る場合)。
- フルサイズ40mmは使いやすい画角で、写りは端正なもの(だと思う)。
FA 43mm F1.9 Limitedを持っているので、これからもフルサイズで使うかどうかは正直なところわかりません。でも描写を含めてその性格が異なるのも事実。気分で使い分けることもあるかと思います。今回は絞り優先AEで撮影していましたが、プログラムオートに設定して、露出と絞りはカメラに任せ、撮影テンポを軽やかにスナップする方があっているようにも思いました。
ということで、条件はありますがフルサイズでも使えるDA40mmF2.8Ltdは、FA 43mm F1.9 Limitedと合わせて、両方持っている方が幸せになれるのではないかと思います。
*撮影の対象や状況、作品性などによって、使えるかどうかの判断が異なると思うので、参考程度に読んでいただけると幸いです。
smc版をお勧めしたいところですが、やっぱり円形絞りに惹かれてしまいます。